USD建てと人民元建て、どちらで中国工場へ発注するかを決める考え方

中国工場との取引では、USD建ての見積を受ける場合もあれば、人民元建ての価格を提示される場合もあります。工場によっては両方の価格を出してくれることもありますが、「今日の円換算で安い方を選ぶ」だけでは十分ではありません。OEM案件では見積から残金支払まで数か月かかるため、通貨と支払時期を一緒に考える必要があります。

まず工場へ、提示価格をどの程度の期間固定できるのか確認します。原材料価格や為替が大きく動いた場合に再見積となるのか、前金を支払った時点で単価が固定されるのかを確認します。特に量産まで時間がかかる案件では重要です。

次に日本円での管理方法を決めます。例えば工場見積が10万USDで、前金30%、残金70%という契約なら、前金と残金の支払時点が異なります。円換算レートも異なる可能性があるため、見積作成時には一定の為替変動余地を持たせます。

人民元建ての場合も同じです。自社の取引銀行が人民元送金に対応しているか、手数料、着金方法、必要情報を確認します。銀行や送金サービスによって対応条件が異なるため、工場との契約を確定する前に実際の送金経路を確認しておく方が安全です。

また受取口座名義は必ず確認します。工場の正式会社名と銀行口座名義が異なる場合には、その理由を確認します。中国国内会社、香港会社、関連貿易会社などを利用しているケースもありますが、誰に何の代金を支払う契約なのかを明確にします。

特に警戒したいのが取引途中の口座変更です。「銀行監査のため別口座へ」「今月だけ香港口座へ」といった連絡を受けた場合、メールだけで確認しないでください。以前から使用している電話番号、WeChat等の別経路で担当者へ確認し、社内でも複数人で口座情報を照合します。

送金手数料の負担方法も確認します。送金銀行、中継銀行、受取銀行の手数料によって、工場への着金額が請求額より少なくなることがあります。工場側が満額着金を条件としている場合、不足分の追加送金で出荷が遅れることもあります。

大型案件では為替だけで利益が大きく変わる可能性があります。必要に応じて取引銀行へ為替予約等について相談することも選択肢ですが、具体的な金融商品の利用は自社の取引規模やリスク方針に合わせて判断します。

中国貿易で大切なのは「ドルが良いか人民元が良いか」という一律の答えではありません。工場価格、支払時期、為替変動、送金手数料、自社の売上通貨を一つの表にして比較することです。見積時、前金時、残金時の円換算額を記録しておけば、案件終了後に実際の仕入原価を正確に分析でき、次回見積の精度も高くなります。