値下げ交渉だけでは原価は下がらない―中国調達で総コストを下げる考え方

中国工場から見積を受け取ったとき、『もう10%安くしてください』という交渉から始めるケースがあります。しかし、工場の利益だけを削る値下げ交渉には限界があります。無理な値下げを続けると、見えない部分で材料、部品、加工工程、梱包などが変更され、結果として品質問題につながる可能性があります。

価格を下げたい場合は、まず価格の構成要素を考えます。商品には材料費、加工費、表面処理、部品、組立、梱包、管理費などが含まれています。OEMでは金型や治具などの初期費用が加わることもあります。どの部分を変更すれば品質への影響を抑えながら原価を下げられるかを工場と相談します。

例えば店舗什器を100台作る場合、10種類の色を各10台作るより、2種類の色を各50台作る方が生産効率を上げられることがあります。複数商品で同じ金具や鋼材を共通化する方法もあります。家具では見えない内部構造まで高価な仕上材を使用する必要があるのか、使用場所に応じて材料を分けられないかを検討します。

次に重要なのが梱包です。中国工場の単価が数%安くても、梱包容積が20%大きければ、大型商品の場合は物流費で価格差が消える可能性があります。完成品で輸入するか、ノックダウン構造にして容積を減らすかを検討し、日本での組立費まで含めて比較します。

見積を比較するときはIncotermsも揃えます。EXW価格とFOB価格をそのまま比較することはできません。商品代、中国国内物流、輸出関連費用、国際輸送、日本側通関関連費用、関税、輸入時税金、国内配送まで並べた着地原価表を作ると判断しやすくなります。

またMOQにも注意します。単価を下げるために必要以上の数量を発注し、在庫を長期間保管すれば、資金負担や倉庫費が増えます。1個当たり単価だけではなく、販売可能数量と在庫期間まで考える必要があります。

価格交渉では『この価格にしてください』ではなく、『数量を300個にしたらいくらか』『梱包を変更すると物流費を減らせるか』『共通部品に変更した場合はいくら下がるか』と具体的に相談すると工場も提案しやすくなります。

中国調達の原価改善は、工場単価だけを見る仕事ではありません。商品設計、発注数量、生産効率、梱包、輸送、関税、日本国内物流を一つのコストとして考えることが重要です。最終的に日本の納品先までいくらで届けられるかを基準に交渉することで、品質を犠牲にしない原価改善が可能になります。